脳卒中

脳卒中とは脳血管に障害が起こる病気(脳血管障害)の総称で、代表的なものには脳血管が詰まる脳梗塞(のうこうそく)と、脳血管が破れる脳出血、くも膜下出血があります。

脳梗塞

動脈硬化による「アテローム血栓症」、心房細動などの不整脈が原因で心臓内の血栓が原因の「心原性塞栓症」、高血圧により脳の細い血管が詰まる「ラクナ梗塞」があります。高血圧・糖尿病・高脂血症・肥満など多くのリスクファクターがあります。特徴的な症状は片麻痺(半身の手足の脱力)、呂律障害、意識障害などでこれらは突然起こります。寒い冬でも暑い夏でも脳梗塞は起こりやすく、迅速に治療を開始することが重要です。
治療にはカテーテル治療による血栓回収療法やtPAという血栓を溶かす薬を使用する超急性期治療と血液をさらさらにする薬や脳循環を保つ薬や脳を保護する薬などを点滴で投与する急性期治療があります。治療を始める時間が早ければ早いほど症状が改善する率は上がります。
急性期治療とともにリハビリテーションを行うことも重要です。

脳出血

脳内を走る細い動脈が突然破れて出血を起こし、脳を壊したり圧迫したりすることでさまざまな症状が現れる病気です。出血量と出血場所によって生命にかかわってくることがある怖い病気です。初期症状としては血液が破れた血管から漏れて周囲の脳や膜を破壊したり圧迫したりすることではじまる頭痛や吐き気です。血圧も上昇しているので、血圧測定を行えば収縮期血圧が200前後にまで上がることがあります。出血した場所によって片麻痺や意識障害など多くの神経症状を出します。手術が必要かは出血の量に決まります。再出血を起こさないように血圧をコントロールしながら治療を行います。脳梗塞と同様にリハビリテーションも重要です。

クモ膜下出血

脳を覆う薄いくも膜の下に出血が生じる病気です。多くは脳内を走行する動脈にある動脈瘤というこぶが破裂し出血したものです。比較的若い人では生まれつきの病気である脳動静脈奇形(AVM)が原因のこともあります。突然“バットで殴られたような非常に強い頭痛”が生じることが特徴です。頭痛は吐き気や嘔吐を伴い、意識を失うこともあります。また、脳内に出血を伴う場合には手足の麻痺や言葉が出ないといった神経症状を伴います。 早期に再破裂することがあり早急に手術が必要です。手術には開頭クリッピング術とカテーテルによる脳動脈瘤塞栓術があります。瘤の状況で手術方法は選択されます。手術後もしばらくは脳血管攣縮や急性水頭症などの合併症に注意していかなければなりません。現在でも命を失うことが多い病気の一つです。

頭部外傷

頭部打撲時の外力の強さによっては頭がい骨骨折を起こします。頭がい骨骨折を起こさずとも、脳に過度な衝撃が加わると脳出血(急性硬膜外出血・急性硬膜下出血・外傷性くも膜下出血など)を起こすことがあります。また、軽度の外傷でも高齢者の場合は3~5週間後に血腫が溜まってきて慢性硬膜下血腫という病気になることがあります。
頭部打撲をした時にはCTなどの検査をお勧めします。また、しばらく経って、「ぼーっとしている」「認知症が進んだ」「手足に力が入らない」「頭痛がする」などの症状がある場合はCT検査をお勧めします。
なお、小学生低学年以下のお子さんの頭部外傷については状況によっては当院で対応出来ないこともありますので来院前にご相談ください。

認知症

認知症とは正常であった認知機能が脳の障害によって持続性に低下し, 日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態を言います。認知症としてアルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などがあります。それぞれ症状や経過に違いがあります。治療や対処法も異なるので診断が重要です。
また、年齢の影響のみで説明出来ないもの忘れがあっても日常生活に障害がない状態をMCIと言います。

アルツハイマー型認知症

脳にアミロイドβやタウタンパクというたんぱく質が異常にたまり、それに伴い脳細胞が損傷したり神経伝達物質が減少したりして、脳の全体が萎縮して引き起こされる病気です。歳を取るほど発症頻度高くなり、男性よりも女性に多い傾向があります。加齢が最大の要因ですが、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの基礎疾患があるとアミロイドβがたまりやすくなります。糖尿病の人はそうでない人に比べて発症するリスクが2倍になります。寝不足やストレス、歯周病なども関連があるとされています。最も多い症状は比較的最近のことを思い出せず、体験したことを忘れるもの忘れです(記憶障害)。
日付や曜日、自分のいる場所がわからなくなるといった時間や場所の見当識障害のほか、言語の理解力の低下、道に迷うといった症状も見られるようになります。ほかにも意欲の低下や抑うつ、「お金を盗られた、通帳を隠された」といった物盗られ妄想が生じることもあれば、徘徊をしたり、怒りっぽくなることもあります。症状には個人差があります。

血管性認知症

脳卒中によって脳内の神経組織が破壊され現れる認知症です。単なる動脈硬化ではなく、脳血管障害により急性もしくは慢性の脳虚血により脳機能が低下することで認知症を来たすと言われています。アルツハイマー型認知症と同様に日常生活に支障を来すような記憶障害や認知機能障害を認めます。具体的には、「物覚えが悪くなった」、「今までできていたことができなくなった」、「時間や物の名前、においや味がわからない」、「自分で服を着ることができない」、「自分の家に帰ることができない」など様々な症状が現れます。特定の分野のことはしっかりできるのに、他のことになると全く出来なくなるといった症状や「まだら認知」と呼ばれ症状が良くなったり悪くなったりと変動するのが特徴です。

レビー小体型認知症

記憶障害・動作が遅くなり転びやすくなるパーキンソン症状・繰り返す幻視が特徴の認知症です。 患者自身には病気であるという認識がなく、男性の方が約2倍発症しやすく、他の認知症と比べて進行が早いのが特徴です。睡眠中に誰かと声を出して話したり、大声を出したり、腕や足を動かすなど、夢の中と同じ動きをするレム睡眠行動異常も特徴的な症状です。尿回数が増える(頻尿)、急におしっこがしたくなり我慢できずにもらしてしまいそうになる(尿意切迫)などといった症状や起立時の立ちくらみ(起立性低血圧)など自律神経症状もみられます。

前頭側頭型認知症

脳の神経にタウたんぱくやTDP-43というたんぱくが蓄積し、前頭葉と側頭葉が障害されることで発症する認知症です。思考や理性、社会性などに関わる前頭葉と知識や記憶、感情などを司る側頭葉が障害され、社会性が失われ、お店で万引きをする、赤信号を無視して道路を横断するなど、周囲の目や環境を気にしない自分本位の行動がみられるようになります。毎日決まったコースを散歩したり、同じ時間に同じ行為をするといった常同行動や過食になったり、濃厚な味付けや甘い物を好むなどの食行動の変化、自分自身や周囲に対して無関心になる自発性の低下、感情が鈍り他人への共感や感情移入が難しくなるなども特徴的な症状です。一方で多くの認知症にみられるもの忘れなどの認知機能障害はあまり目立ちません。

その他(てんかん)

脳が一時的に過剰に興奮することで、意識消失やけいれんなどの「てんかん発作」を繰り返し引き起こす病気です。 てんかん発作が止まらなくなる状態(てんかん重積)になると生命の危険につながります。抗てんかん薬の投与で発作をコントロールすることが重要です。また、予防には薬を忘れずに内服すること、規則正しい生活も重要になってきます。